最近、「非認知能力」が重要であるとよく言われます。
以下の本文でくわしく触れますが、最近の言葉で言うと、いわゆる「コミュ力」と言えば分かりやすいでしょう。
自分の能力を発揮しつつ、他者に共感する心のゆとりを持ち、感情をコントロールする力があり、みんなとうまくやっていく能力とでもいいましょうか。
管理人が学生だったころ、30年くらい前は、とても単純な方法で人の能力を測っていました。
勉強を頑張って、上位の高校に進学して、そこでさらに勉強して、上位の大学に進学することが目標でした。
偏差値によって学力を測っていたので、ある意味公平で分かりやすい評価方法でした。
しかし、どうもそれだけでは、人間の能力は測れないということがだんだん明らかになってきました。
もちろん学力が高いに越したことはありませんが、大人になって社会に出て働くようになると、ペーパーテストで優秀でも、人間関係をうまく作れなかったり、仕事や社会生活がうまくできないという現実に多くの人が直面するようになりました。
そういう管理人も、進学では多少うまくやりましたが、社会に出てからずいぶん苦労しました。
試験が面接とか、集団ディベートとか言われると気が重いという気持ちはよく分かります。
しかし、もっと社会に出る前に、勉強以外の経験も十分積んでおくべきだったと反省します。
社会に出てから、圧倒的にモノを言うのはこの「非認知能力」です。
この記事では、認知能力と非認知能力について解説します。
はじめに:認知能力と非認知能力の基本
認知能力とは、学力テストやIQ検査で数値化できる「目に見える力」です。
計算力や記憶力、言語理解などが該当し、従来の教育評価の中心でした。
一方、非認知能力は数値化が困難な内面的スキルで、自制心・忍耐力・社会性など「生きる力」を指します。
両者の最大の違いは、非認知能力が人生の長期的な成功(収入・幸福感・健康)に強く影響することです。
例えば、OECDの調査では、非認知能力が高い人は失業率が最大34%低く、生涯年収も平均23%高い傾向があります。
非認知能力が人生を変える:研究が示す重要性
ジェームズ・ヘックマンの研究(ノーベル経済学賞受賞)は、幼児期に非認知能力を育んだグループが、40年後の学歴・雇用率で顕著な優位性を示すことを実証しました。
日本では文科省の「21世紀出生児縦断調査」で、小学校高学年での体験活動(自然体験・ボランティア)が非認知能力を向上させ、中高生期の学習意欲や社会性に持続的効果をもたらすと報告されています。
特にAI時代においては、創造性や柔軟性など機械が代替できない能力の価値が上昇しています。
2025年時点で、グローバル企業の人事担当者調査では採用基準の72%が「非認知スキル」を重視すると回答しています。
非認知能力の核心:8つの要素とその役割
非認知能力は多面的ですが、教育心理学では8要素が中核とされます。
1.自己認識:感情や価値観の自覚(例:感情の言語化)
2.内発的動機づけ:好奇心や価値観に基づく行動(例:目標の可視化)
3.GRIT(やり抜く力):長期目標への持続性(例:困難時の復元戦略)
4.自制心:衝動制御と計画的行動(例:時間管理手法)
5.メタ認知:思考プロセスの客観視(例:学習戦略の選択)
6.社会性:共感・協働・リーダーシップ(例:対話型プロジェクト)
7.レジリエンス:挫折からの回復力(例:失敗の再定義トレーニング)
8.創造的思考:既存枠組みの超越(例:オープンエンド課題)
これらは相互に連関し、例えば自己認識が高まると自制心が向上し、社会性の発揮につながる「能力の相乗効果」が生まれます。

学校教育の革新:非認知能力を育む実践例
組織的アプローチの導入
岡山大学・中山芳一氏が提唱する「教育実践ステップ5.0」では、教員個人の努力ではなく学校組織全体で非認知能力を育成します。
目標設定:「挑戦力」「他者信頼」など抽象概念を行動レベルで定義
見える化:EdvPathツールで生徒の成長をデータ化
データに基づく生きる力の育成で 生徒の学習意欲を上げる – EdvPath
授業設計:単元ごとに育成目標を明示(例:数学で「忍耐力」を重点化)
形成的評価:小テストで自己診断→改善計画の作成
振り返り:振り返りシートによるメタ認知の促進
※形成的評価とは、学習の途中段階で生徒の理解度や習熟度を把握し、指導を改善するために行われる評価方法
体験型学習の進化
従来の課外活動に加え、eスポーツ協働大会で戦略的思考とチームワークを育成、STEAM教育では「ロボット製作×地域課題解決」プロジェクトを通じて創造性と社会性を同時に鍛える手法が広がっています。
長野県の実証校では、これらの取り組みにより生徒の自己効力感が47%向上し、不登校率が22%減少しました。
家庭で今日から始める5つの習慣
年齢別アプローチ
幼児期:ごっこ遊びで役割意識を育成(例:お店屋さんごっこでの交渉体験)
学童期:家庭会議での意見表明と合意形成(例:週末計画の提案権付与)
思春期以降:失敗の振り返り対話(「次はどう改善する?」の問いかけ)
科学的裏付けのある手法
感情の言語化トレーニング:夕食時に「今日の嬉しかったこと・悔しかったこと」を共有
マイクロチャレンジ設定:「毎日10分片付け」など小さな目標で達成感を積み重ねる
自然体験の質的転換:散歩で「季節の変化を3つ発見」など観察眼を鍛える課題付与
まとめ:未来を拓く教育のあり方
認知能力と非認知能力は対立概念ではなく、相互補完的関係にあります。
AIが認知領域を代替する時代において、教育の本質は「数値化できない人間性の深化」へシフトしています。
文科省のGIGAスクール構想でも、端末活用時に「協働編集ツールでの意見調整」「プロジェクト進行の自己管理」など非認知要素の評価基準が2025年度から導入されました。
個人・家庭・学校が連携し「認知と非認知の統合モデル」を構築することで、予測不能な社会変化を生き抜く真の人間力が育まれます。
冒頭に書いたように、社会に出てから、圧倒的にモノを言うのはこの「非認知能力」です。
繰り返しになりますが、非認知能力は数値化が困難な内面的スキルで、自制心・忍耐力・社会性など「生きる力」のことです。
こういうふうに書くと、もともと持って生まれた性格や家庭環境によって決まってしまうと思われる方もいるでしょう。
しかしここで大事なのは、「認知能力と非認知能力は対立ではなく、互いに補い合う関係である」ということです。
まずは認知能力である勉強を適度に頑張りながら、部活でも家事の手伝いでも趣味でも自分の得意を活かすことで相乗効果が生まれて、ともに伸ばすことが可能です。
「コンクリートジャングル」をサバイバルする とは、言い換えると「認知能力」と「非認知能力」をバランス良く身につけていくということなんですね。
コロナ禍を経験し、スマホやSNSやYouTubeによって、価値観の多様化はますます進行しています。
さらには「学習の個別最適化」ということが言われていて、個人個人が好きなように学習する流れになっています。
認知能力は、いろいろな学習ツールを使えば一人で進めることが可能です。
ここでつまずくのは、むしろ非認知能力の育て方です。
非認知能力を育てることこそ、大人の手厚いサポートが必要です。
以上、この記事では、非認知能力を向上させる教育とその具体的な方法について考えました。
それではまた。
参照元:
大人の非認知能力を鍛える方法|8つの実践トレーニングと習慣化のコツ | フィーノリッケペダゴー資格認定講座
非認知能力とは何か、学校教育での伸ばし方 教育専門メディアが解説
A systematic review and meta-analysis of effects of early life non-cognitive skills on academic, psychosocial, cognitive and health outcomes – PMC
For School and College Success – The Power of Non-cognitive Skills – IDRA
Noncognitive Skills—Distinct from Cognitive Abilities—Are Important to Success Across the Life Course | Columbia University Mailman School of Public Health