はじめに
社会基盤を揺るがす三つの課題が2025年現在、相互に連鎖しながら社会変革を迫っています。
それは、科学技術やITの急速な進化(AI、ロボット、IoT、自動運転など)、インフラ老朽化の深刻化、そしてそれらを支える機械工学や建設土木系人材の不足です。
※IoT(アイオーティー)とは、 「Internet of Things」の略で、「モノのインターネット」を意味します。
これは、これまでインターネットに接続されていなかった様々な「モノ」が、ネットワークを通じて相互に情報交換をする仕組みです。
日本は工業製品の製造分野で世界ナンバーワンです。
ものづくりの技術は小さな部品工場に至るまで、現在でも世界で最高水準を保っています。
一方、ITや半導体などでは他の先進国に後れを取ってしまいました。
しかしこれからは、日本に強みがある工業製品の製造とITを組み合わせたIoT分野において、ふたたび世界で優位に立つことができます。
製造機械、建設機械やIoT家電、自動運転やドローン配送などの輸送、介護ロボットなど多くの可能性があります。
本記事では各種のデータをもとに、技術・インフラ・人材の三つの課題の解決策を考えます。
最後に、筑後地区で最先端の技術を学ぶことができる工業高校、専門学校の一部をご紹介します。
次世代技術トレンドの最前線
1.1 IoTと自動運転の2025年動向
実用化が加速する自動運転技術:レベル4自動運転車の公道試験が国内10都市以上で進行しています。
V2X(車両とインフラ間通信)技術の導入により事故率を最大40%低減可能と試算されています。
SDV(ソフトウェア定義車両)が2026年一般発売予定で、機能のサブスクリプション化が新しいビジネスモデルになると見込まれています。
IoTの産業応用拡大:スマートシティ向けセンサーネットワークが災害監視・交通最適化を実現します。
エッジAIによるリアルタイムデータ処理で製造業の生産性が平均23%向上します。
1.2 2026年に注目すべき6大技術
1.AIエージェント:自律的に意思決定するAIが業務プロセスを変革
2.6G通信:2030年商用化へ、自動運転の低遅延通信を実現
3.量子ネットワーク:暗号技術と金融モデリングを革新
4.複合現実(MR):医療訓練・建築設計で実用化加速
5.ハイパーオートメーション:AI/RPA統合で複雑業務を完全自動化
6.持続可能ネットワーク:CO2削減型データセンターが急成長
参照元:
今話題のマーケティングトレンドワード5:2025年4月
AIから量子技術まで:2026年に通信業界を変革する6大トレンド | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
【2025年最新】世界が最も注目する最先端技術トレンド15選|Octoparse Japan@ノーコードスクレイピングツール ほか
インフラ老朽化の危機的現状
2.1 道路・橋梁・水道管の劣化実態
建設後50年超施設が全国で急増:道路橋梁の32%、水道管の22%が法定耐用年数を超過しています。
2025年6月時点で老朽水道管は17.6万kmに達し、年間3,500件の漏水事故が発生しています。
事故リスクの顕在化:埼玉県八潮市の道路陥没(2025年1月)など、インフラ劣化に起因する事故が前年比17%増えています。
これらのインフラ施設の更新が急務となっています。
2.2 国家的対策と革新技術
国土交通省の戦略的更新計画:2025年度予算1兆783億円(前年比29%増)を配分しました。
優先度評価システムで危険度の高い施設から更新を推進していく予定です。
ドローン点検・AI診断の導入:鉄道業界でDX推進、AI予知保全により設備故障が72時間前から検知可能になるといわれています。
参照元:
2040年の日本崩壊 インフラ老朽化の放置で起きる最悪のシナリオ | 日経BOOKプラス
水道管の老朽化問題が全国で深刻化!自治体の課題と対応策を解説|ジチタイワークスWEB ほか

工学・土木技術系人材の不足
3.1 深刻化する人手不足の実態
若年層の離職率32%・高齢化率41%:建設業就業者数は1997年比30%減の479万人。
機械工学志望学生が10年間で45%減少。
地域・職種格差の拡大:電気工事従事者の平均年収547万円に対し、土木従事者は415万円。
大阪と高知では310万円の地域格差。
民間企業における技術系人材の不足は極めて深刻な状況にあります。
2025年2月時点で建設業の有効求人倍率は5.22倍に達しており、土木技術者に至っては6.38倍という驚異的な数値を記録しています。
これは事務職の0.39倍の約16倍、介護サービス職の3.21倍と比較しても、圧倒的に高い水準です。
建設業全体では70.4%の企業が人手不足を実感しており、2024年8月の調査では79%の工事会社が「人手不足が受注に影響している」と回答しています。
また、建設技能労働者の約35%が55歳以上であり、2025年までに大量の退職者が発生することが確実視されています。
特に施工管理技士、熟練職人、技術系管理職などは、新しい人材で簡単に代替できない状況です。
技術職は2013年を底に増加に転じ、最近は30万人台後半で推移していますが、技能職は減少傾向が続いています。
3.2 人手不足解消・人材育成の新たな枠組み
i-Constructionの推進:国土交通省が打ち出したi-Constructionは、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにICTを導入し、生産性を向上させる取り組みです。
具体的な活用例として以下が挙げられます。
・UAVやドローンによる3次元測量:測量時間が短時間で抑えられ、測量時間・人件費の削減につながります
・3次元データの活用:設計・施工の効率化を実現します
・ICT建機による施工:作業の自動化と効率化を促進します
※UAVとは、Unmanned Aerial Vehicleの略で、人が搭乗しない航空機全般を指します。ドローンもUAVの一種です。
BIM/CIMの導入:BIM/CIMの導入により、設計・施工の効率化が図られ、従来よりも少ない人手で業務を遂行できるようになります。
※BIM (Building Information Modeling): 主に建築分野で、建物の構造や設備、材料などの情報を3次元モデルに集約します。
CIM (Construction Information Modeling): 主に土木分野で、インフラ工事における地形や地質、自然環境情報など広範なデータを3次元モデルで管理します。
建設ロボットとドローンの活用:ドローンによる測量・検査の自動化、建設ロボット導入による作業の省力化
DX人材育成の急拡大:東京都市大学のリカレントプログラムなど、VR訓練・AI活用カリキュラムが技能継承を支援。
経済産業省デジタルスキル標準準拠コースが増加。
産学連携の加速:鉄道業界が「サステナブルDX推進」シンポジウムで人材育成枠組みを提案。
外国人技術者受け入れを中小企業向けに拡充。
冒頭に書いたように、従来から日本に強みがある製造分野はITやAIなどの先端技術と組み合わせて大きく発展する可能性があります。
若者に対してその分野に進む魅力を伝えたり、資格取得の要件緩和やリスキリング奨学金など、他の分野からキャリアチェンジできるような土壌の整備が必要です。
その意味では、IT、コンピュータに関する知識や技術は、一般教養として必修科目化していくでしょう。
参照元:
【建設業】人手不足の原因とは?深刻な現状と今すぐできる対策・IT活用事例も紹介|2025年最新|【ベスキャリ建設】建設・施工管理の求人・転職情報サイト
【土木業界の今後】土木技術者の不足が深刻化|人材確保と業務効率化するための具体策 -(株)Joh Abroad
建設業界に迫る 2025年問題と人手不足:どう立ち向かう? – NOBORDERS Inc.
【2025年版】建設業の人手不足とは?4つの現実的対策と外国人材活用のポイント
2025DX人材育成コース – 東京都市大学リカレントプログラム ほか
筑後地区で機械工学、土木技術を学べる高等学校や専門学校
4.1 機械工学、土木技術を学べる教育機関
国立久留米工業高等専門学校(久留米市)
機械工学科を有する国立高専。材料力学・機械設計・制御工学を体系的に学習。実習を通じた技術者育成に注力。
ほかに電気電子工学科、制御情報工学科(2027年に情報科学科に改編)、生物応用化学科、材料システム工学科がある。
私立祐誠高等学校(久留米市)
ものづくり機械工学科、自動車工学科、土木工学科、創造情報工学科、のりもの未来科航空ビジネスコースを設置。
グループ校に久留米工業大学、久留米自動車工科大学校、久留米自動車学校があり、自動車エンジニアなど社会課題に直結したユニークな専門学科構成。
県立浮羽工業高等学校(久留米市田主丸町)
建築科、環境デザイン科、機械科、材料技術科、電気科がある。
県立八女工業高等学校(筑後市)
電子機械科、IT自動車科、電気科、情報技術科、土木科、工業化学科を設置。
国立有明工業高等専門学校(大牟田市)
5年一貫教育。創造工学科(エネルギー・応用化学・環境生命・メカニクス・情報システム・建築の全6コース)と専攻科がある。
三池工業高等学校(大牟田市)
電気科、電子機械科、情報電子科、土木科、工業化学科を設置。
4.2 そのほかの専門学校
久留米自動車工科大学校(八女郡広川町)
自動車整備士養成に特化。二級/一級自動車工学科でエンジン制御・車体構造を実践学習。九州最大級の設備環境。
筑後地区ではありませんが、福岡建設専門学校(福岡市)、九州電気専門学校(福岡市)など建設・電気に特化した専門学校があります。
このような専門教育機関は軒並み就職率100%で、進学先も無数にあります。
最新の教育環境を整え、特色ある学科を設けて各校が競っています。
まとめ
高卒人材は、これまで述べてきた分野において引っ張りだこの状況だと言われています。
【教育特集】人手不足の現代で「高卒人材」が引く手あまた | 週刊大阪日日新聞
企業を成長させる秘策は「高校新卒人材の採用」だ 大卒と高卒の「仕事のできるできない」の差はない | 就職四季報プラスワン | 東洋経済オンライン
ただし、人件費が安く企業風土に染まりやすいという企業側のメリットばかり強調されている面もあります。
ITやコンピュータエンジニアは人手不足のため報酬が高騰している一方で、従来の製造、機械、電気、建築、土木の現業職では「3K(きつい、汚い、危険)」とうイメージが根強くあります。
さらに、「給料が安い」「休暇が取れない」「希望が持てない」とも言われています。
業界では危機感を持って、「給料がよい、休暇が取れる、希望がもてる」という「新3K」を目指し、業務効率化や働き方改革を進めています。
新3Kとは?建設業の深刻な人材不足を解決する手段 | 建設業界で働こう!茨城編
上に述べたインフラの老朽化、設備や自動車のメンテナンスに関わる仕事は、都市部だけでなく地方各地で需要があります。
「3K(きつい、汚い、危険)」を最新技術で克服し、仕事に付加価値をつけることで、「新3K(給料がよい、休暇が取れる、希望がもてる)」を実現するにはどうすればよいか?
デザインやライフスタイルまで含めて、男性、女性問わず活躍できる可能性があります。
以上、技術・インフラ・人材の三つの課題について考えました。
それではまた。