こんにちは、管理人です。
小学校で生徒一人一人にタブレットが配布されてから、ずいぶん時間が経ちました。
数年前、コロナ禍の臨時休校のなかでオンライン授業の必要性が高まり、そういう時期に配られましたよね。
しかし、となりの韓国など海外ではオンライン授業をバンバンやっていたそうですが、日本ではどうだったかご存知だと思います。
コロナ禍がおおむね収束し、オンライン授業の必要性は低下しました。
社会でも、リモートワークから出社勤務に戻した企業も多いです。
「これからは、仕事も勉強も、いつでもどこでもオンラインでリモートで好きなときにやれる」
そうなるんじゃなかったのでしょうか?
現在では、オンライン授業をやるような気配はほとんどありませんよね。
では、そもそも、なぜ生徒一人一人にタブレットが配布されたのでしょうか?
この疑問に答えるには、「GIGAスクール構想」について説明しなければなりません。
タブレット端末の一人一台の整備は、コロナ禍になる前から進められていました。
ICT(情報通信技術)教育の歴史的背景として、日本では1970年代からICT教育が始まり、1980年代には学校にコンピュータが導入されました。
その後、2000年代にインターネット環境が整備され、ICT教育が本格化しました。
2011年度に文部科学省が「教育の情報化ビジョン」を発表しました。
GIGAスクール構想とは?
GIGAスクール構想の具体的な目標
GIGAスクール構想は、文部科学省が2019年に提唱した教育のデジタル化プロジェクトであり、以下の具体的な目標を掲げています。
(1)個別最適化された学びの実現
1.一人ひとりに合った学習環境の提供
学習履歴や進捗状況を把握し、生徒の理解度やつまずきに応じた個別指導を可能にする環境を整備します。
2.多様な子どもたちを誰一人取り残さない教育
生徒の個性や能力に応じた学びを支援し、教育格差を解消することを目指しています。
(2)ICT環境の整備
1.児童生徒1人1台端末の配布
全国の小中学校で、すべての児童生徒に学習用端末(パソコンやタブレット)を配布し、ICTを活用した教育を推進します。
2.高速大容量通信ネットワークの整備
学校内で快適にインターネットを利用できる環境を整備し、オンライン学習やデジタル教材の活用を支援します。
(3)Society 5.0時代に対応した教育
1.情報活用能力の向上
デジタル社会で必要なスキル(情報の選別、活用、発信能力など)を育成し、未来を切り開く力を養います。
2.創造性を育む学び
プログラミングやデジタルツールを活用し、技術革新や価値創造の基盤となる力を育てます。
(4)教員のICT活用指導力の向上
1.指導体制の強化
教員がICTを効果的に活用できるよう、研修や支援体制を整備します。
(5)教育の質の向上
1.双方向型授業の実現
ICTを活用して教師と生徒のコミュニケーションを強化し、主体的・対話的で深い学びを促進します。
GIGAスクール構想は、ICTを活用して教育の質を向上させ、個別最適化された学びを実現することを目指しています。
これにより、Society 5.0時代を生き抜く力を子どもたちに育成し、誰一人取り残さない教育環境を整備することがその核心です。
Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府
「Society 5.0」という言葉が出てきました。
それの説明は省略しますが、要するに、ブロードバンド(常時接続)のインターネットが登場してから、スマホ一人一台が当たり前の時代になりました。
それなのに、生活の大半の時間を過ごす学校という空間が、まるで無人島のような、50年前、60年前と変わらないような空間ではもはや話にならないということになったんですね。
「誰一人取り残さない」どころか、日本人が世界から取り残されてしまうという危機感がありました。
それで国は、日本全国津々浦々の学校に、デジタル・オンライン環境と、一人一台のデジタル端末を整備するという巨大プロジェクトに乗り出したのです。
このまさに壮大な「GIGAスクール構想」の目的は理解できます。
しかしいま現在、小学校の娘がタブレットを持って、学校と家を往復している。
で、家でタブレットでYouTubeを見てるわけですよ。
そこでまた、もとの疑問に立ち戻ってしまいます。
「そもそも莫大な国の予算を使って、子どもにタブレットを一台ずつ持たせる必要があったのか」と。

それでもやっぱり、生徒一人一人にタブレット端末は必要なのか?
生徒にタブレットが配布された背景には、家庭の経済状況による教育格差を是正する目的があるのではないでしょうか?
(1)経済的困難な家庭への支援
1.教育格差の是正
GIGAスクール構想では、家庭の経済状況に関係なく、すべての児童生徒がICTを活用した学習を行える環境を整えることを目指しています。
特に、低所得世帯や困窮家庭の子どもたちが学習機会を失わないよう、端末の配布が進められました。
2.デジタル・デバイドの解消
経済的に困難な家庭では、インターネットやデジタル端末へのアクセスが制限されることが多く、これが教育格差を生む要因となっています。
タブレット配布は、この「デジタル・デバイド(ディバイド)」を解消し、すべての子どもが平等に学べる環境を提供するための施策です。
(2)家庭学習の支援
1.家庭での学習機会の拡大
タブレットを家庭に持ち帰ることで、学校外でも学習を続けられる環境を整備し、家庭の経済力に依存しない学びを実現することが目的とされています。
2.オンライン授業の対応
新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が急速に普及した際、家庭に端末がないことで学習機会を失う子どもたちが出ないよう、タブレット配布が前倒しで進められました。
(3)公費による端末配布
1.費用負担の軽減
小中学校では、端末の費用が公費で賄われており、家庭の経済的負担を軽減する仕組みが整えられています。
これにより、経済的に困難な家庭でも安心して端末を利用できるようになっています。
タブレット配布は、単なる教育のデジタル化を進めるだけでなく、経済的に困難な家庭への支援や教育格差の是正を目的とした施策でもあります。
これにより、すべての子どもが平等に学びの機会を得られる環境を目指していると言えます。
家庭の経済事情によってデジタル端末を持っている子と持っていない子が存在することは、将来深刻な格差となって現れるでしょう。
一方、比較的裕福な家庭でも、教育方針によりデジタル端末を持たせないという保護者もいらっしゃいます。
IT企業の大経営者である、あのスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツが、子どものスマホ利用に慎重だったり、厳しく制限したらしいというのは有名な話です。
現在すでにデジタル端末を使いこなすことが生活の一部となっており、これからますます深化していくと考えられます。
この流れを後戻りすることは、不可能なのが現実です。
だからこそ教育現場において、デジタル端末との「正しい付き合い方」を学ぶのは必要なことではないかと、管理人は考えます。
「ITに関する知識やスキルを学ぶこと」と「ICTを通じて教科の学習や理解を深めること」のどちらが目的なの?
「ICT教育」や「教育のデジタル化」を考えたとき、すぐ思い浮かぶのは「プログラミング教育」ではないでしょうか。
よく似ていますが、そもそも「IT教育」と「ICT教育」との違いは何でしょうか?
「IT教育」は、プログラミングやコンピュータサイエンスなど、ICTそのものの知識やスキルを学ぶことです。
それに対して、「ICT教育」とは、ICTを「手段」として活用し、教科の学びを深めたり、情報活用能力を育てる教育と言えるでしょう。
ICT教育の主目的は、以下の2つを統合的に達成することです。
◎情報活用能力の育成(デジタルリテラシーの向上)
◎教科の学びの深化(学習効率化や理解促進)
これらは切り離せない関係にあり、ICTを「手段」として活用しながら、教科の学びを深めると同時に、情報社会で必要なスキルを育むことを目指しています。
文部科学省は、ICT教育の最終目的を「ICTそのものを学ぶこと」ではなく、「ICTを活用して学びを深め、未来社会で必要な力を育むこと」と位置づけています。
ICTはあくまで「手段」であり、教科の学びや創造性の育成、個別最適化された教育の実現が目指されています。
ICT教育の目的は、「ICTに関する知識を学ぶこと」ではなく、「ICTを通じて教科の学びや理解を深めること」が主軸です。
ただし、これを実現する過程で、情報活用能力やデジタルリテラシーといったスキルも自然に育まれるため、両者は補完的な関係にあります。
以上、この記事では、「生徒にタブレット端末配布は必要だったのか?」という疑問や「IT教育とICT教育はどちらが目的なの?」といった素朴な疑問を取り上げて、教育のデジタル化について考えました。
では、また。