佐賀県の高等学校における進学状況は、少子化や社会的な進学志向の変化、地域経済の影響を受けて大きく変化してきました。本レポートでは、30年前(1995年頃)と現在(2025年)の進学状況を比較し、専攻ごとの生徒数や定員数、進学傾向の違いを考えます。
1. 生徒数と定員数の推移
1.1 生徒数の減少
佐賀県の高等学校における生徒数は、少子化の影響を受けて大幅に減少しています。
例えば、令和6年度(2024年度)の佐賀県全体の高校生徒数は、30年前と比較して大幅に減少していることが確認されています。
具体的には、以下のような傾向が見られます。
- 1995年頃:佐賀県の高校生徒数は、全国的な出生率の高さを背景に現在よりも多く、各学校の定員も充足していました。
- 2025年現在:少子化の進行により、佐賀県内の高校生徒数は減少。特に地方部の高校では定員割れが顕著で、募集定員を削減する学校も増えています。
1.2 定員数の削減
少子化に伴い、多くの高校で募集定員が削減されています。
例えば、伊万里高校では令和7年度(2025年度)の募集定員が40人減少し、160人となっています。
このような定員削減は、他の地域でも同様の傾向が見られます。
2. 専攻ごとの生徒数の変化
2.1 普通科の人気の変化
30年前は、普通科が進学希望者の中心であり、大学進学を目指す生徒が多く集まっていました。
しかし、現在では普通科の人気が相対的に低下し、専門性の高い学科や総合学科への志向が強まっています。
- 1995年頃:普通科が主流であり、進学実績の高い学校(例:佐賀西高校、致遠館高校)が特に人気でした。
- 2025年現在:普通科の定員は維持されているものの、専門学科(工業科、商業科など)や総合学科の設置が進み、多様な進路選択を支援する体制が整っています。
2.2 専門学科の拡充
専門学科では、地域の産業構造に合わせたカリキュラムが強化されています。
例えば、有田工業高校では、陶磁器産業に関連する技術教育が行われており、地域産業との連携が進んでいます。
- 工業科:男子生徒を中心に一定の人気を維持。就職率が高く、地元企業との連携が強化されています。
- 商業科:女子生徒の割合が高く、簿記や情報処理などの資格取得を目指す生徒が多いです。
3. 進学率と就職率の変化
3.1 大学進学率の上昇
30年前と比較して、大学進学率は大幅に上昇しています。
これは、社会全体の学歴志向の高まりや、大学進学が就職に有利とされる風潮の影響を受けたものです。
- 1995年頃:大学進学率は全国平均で約30%程度であり、佐賀県でも同様の傾向が見られました。
- 2025年現在:佐賀県の大学進学率は50%を超えており、特に進学校では難関大学への進学実績が向上しています。
3.2 就職率の低下
一方で、高校卒業後に就職する生徒の割合は減少しています。
これは、大学や専門学校への進学が一般化したことに加え、地元企業の採用枠が縮小していることが影響しています。
- 1995年頃:高校卒業後に地元企業へ就職する生徒が多く、特に工業科や商業科の生徒は高い就職率を誇っていました。
- 2025年現在:就職率は低下傾向にあり、進学と就職を両立する「就職しながら進学する」ケースも増えています。

4. 地域別の傾向
4.1 都市部と地方部の格差
佐賀市や鳥栖市などの都市部では、進学実績の高い高校が集中しており、倍率も高い傾向があります。
一方、地方部では少子化の影響が顕著で、定員割れが発生している学校も少なくありません。
- 都市部:佐賀西高校や致遠館高校など、進学実績の高い学校が人気。
- 地方部:唐津青翔高校や太良高校などでは定員割れが発生し、地域の生徒数減少が課題となっています。
4.2 学区制の撤廃
学区制の撤廃により、進学実績の高い学校への集中が進んでいます。
これにより、都市部の高校がさらに人気を集める一方で、地方部の高校では生徒数の確保が難しくなっています。
5. 今後の課題と展望
5.1 少子化への対応
少子化が進む中で、学校の統廃合や定員削減が避けられない状況です。
地域の特色を活かした教育プログラムの充実や、県外からの生徒受け入れを促進する取り組みが求められます。
5.2 多様な進路選択の支援
大学進学だけでなく、専門学校や就職など多様な進路選択を支援する体制が重要です。
特に、地元企業との連携を強化し、地域に根ざした人材育成を進める必要があります。
5.3 地域間格差の是正
都市部と地方部の格差を是正するため、地方部の高校にも魅力的な教育プログラムを導入し、生徒数の確保を図ることが課題です。
まとめ
佐賀県の高等学校における進学状況は、少子化や社会的な変化に伴い大きく変化してきました。
30年前と比較すると、大学進学率の上昇や専門学科の拡充が進む一方で、地方部の高校では定員割れや生徒数減少が課題となっています。
今後は、地域の特色を活かした教育の充実や、多様な進路選択を支援する体制の構築が求められます。